透析患者がインフルエンザにかかってしまった!タミフルを飲んでも大丈夫?
インフルエンザは高熱、咳、喉の痛み、関節の痛みなどの症状がみられる感染症ですが、透析患者さんがインフルエンザに感染した場合はタミフルを飲んでも大丈夫なのでしょうか?
本記事では、透析患者さんとタミフルについて、透析患者さんのインフルエンザ対策について、感染予防・感染拡大・感染後の対策の3つの視点からわかりやすく説明しています。透析患者さんのインフルエンザ対策にお役立てください。
タミフルってどんな薬?
タミフルとはインフルエンザウイルスA型およびB型の増殖を抑えることでインフルエンザの症状を緩和する薬です。
インフルエンザウイルス感染症と診断された場合の治療目的として、もしくはインフルエンザウイルス感染症になった人と一緒に暮らしている65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患または慢性心疾患のある人、糖尿病などの代謝性疾患のある人、腎機能障害のある人への予防目的として処方されます。
治療目的の場合はインフルエンザの症状が出てから、予防目的の場合はインフルエンザにかかっている人に接触してから、どちらの場合も48時間以内に使用開始しなければ効果が期待できません。
・患者向医薬品ガイド タミフルカプセル75
・タミフルカプセル75添付文書 2024年10月改訂(第2版)
透析患者はタミフルを飲んでも大丈夫?
腎機能障害のある人の場合は血漿中濃度が高くなるおそれがあるとして、クレアチニンクリアランス値に応じた用法用量が推奨されています。
クレアチニンクリアランス値(mL/分) | 投与法 | |
---|---|---|
治療 | 予防 | |
Ccr>30 | 1回75mg 1日2回 | 1回75mg 1日1回 |
10<Ccr≦30 | 1回75mg 1日1回 | 1回75mg 隔日 |
Ccr≦10 | 推奨用量は確立していない |
出典:タミフルカプセル75添付文書 2024年10月改訂(第2版)
また、クレアチニンクリアランス5mL/分未満の末期腎不全患者(血液透析および腹膜透析治療中)によるタミフル75の調査においては、タミフル75単回投与で5日間にわたってインフルエンザウイルスに対して効果が期待できる薬剤濃度を維持できると報告されています。
日本透析医会、日本透析医学会でもインフルエンザにかかった際の治療として、5日間でタミフル75を1回1カプセルの服用を推奨しています。5日間後に症状がまだあるようであれば、追加で1カプセルを服用するという方針です。予防の場合も患者の同意をとった上で1カプセルの服用が推奨されています。
透析患者さんもインフルエンザにかかった場合や同居者がインフルエンザにかかった場合はタミフルを飲んで治療、予防を行います。医師、薬剤師の指導のもと、用法用量を守って飲みましょう。
透析患者さんの場合はインフルエンザにかかると重症化する場合もあります。悪化するスピードも非常に早く、2日以内に亡くなる傾向も少なくありません。薬を飲んだ後でも呼吸困難や意識障害の兆候が見られた場合は、迷わず主治医に報告、受診することが大切です。
・タミフルカプセル75添付文書 2024年10月改訂(第2版)
・厚生労働省資料 透析患者におけるタミフルカプセル75mの単回投与における薬物動態
・日立薬剤師会 透析患者さんへの投与について
透析患者のインフルエンザ対策
透析患者さんはインフルエンザにかかると重症化するリスクが高いため、日頃からの予防がとても大切です。感染しないための予防策、感染を広げないための対策、感染した後の対策の3つの対策を以下にまとめました。
感染しないための予防策
- 流行している地域への渡航や外出を避ける
- 人混みをできるだけ避ける
- 外出時はマスクを着用する
- 手洗い・うがい・手指衛生(アルコール消毒など)を徹底する
- 栄養バランスの取れた食事と十分な睡眠を心がけ、体調を整える
- 医師と相談の上、インフルエンザワクチンを接種する
感染を広げないための対策
- 発熱や咳などの症状がある場合は、透析施設へ事前に電話連絡をする
- 通院前には必ず体温を測定する
- 透析前の診察を受け、医師の指示に従う
- 透析中でも症状に気づいたら、すぐに医療スタッフに申し出る
- 咳エチケット(マスク着用、咳をするときには口を覆うなど)を守る
感染後の対策
- 安静を保ち、無理をせず体を休める
- 部屋を暖かく保ち、体を冷やさないようにする
- 水分と栄養をこまめに摂る
- 朝・晩の体温を記録する
- 治療薬や解熱剤は医師、薬剤師の指示に従って服用する
- 呼吸が苦しい、意識がもうろうとするなどの症状があればすぐに主治医に報告、受診する
- 症状があるときの透析治療は透析施設に相談して指示に従う
- 透析中でも異変があればすぐに申し出る
- 家族との共用物(タオル・食器など)は避け、部屋もできるだけ分ける
- 看病する人もマスクを着用し、手洗い・うがいを徹底する
・公益社団法人 日本透析医会 透析室のインフルエンザ対策
・日本透析医学会 透析者のための 新型インフルエンザ対策
まとめ
透析を受けている方にとって、インフルエンザは重症化のリスクがあるため、日頃の予防や早めの対応が必要です。もし、インフルエンザにかかってしまった場合には、タミフルは医師の指導のもと、透析患者で推奨される用法用量を守れば服用可能とされています。
かからない・うつさない・悪化させない、の3つの視点でのインフルエンザ対策が重要です。治療を開始してもいつもと違う苦しさ、つらさがある場合は我慢せずに医療機関に相談しましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
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