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2025年11月27日

透析中の2型糖尿病におけるリラグルチド投与の現状と安全性

透析治療を受けている2型糖尿病患者さんは腎機能の低下によって薬剤の排泄が遅れ、作用が強く出すぎることで低血糖のリスクが高まります。透析患者さんでは使用が禁忌または慎重投与となる血糖降下薬もあり、治療の選択肢が限られているのが現状です。

本記事では、透析中の2型糖尿病患者さんへのリラグルチド投与について、メリット、リスク、医師へ相談すべきポイントを詳しく解説します。

低血糖

リラグルチドとは?透析患者でも使えるの?

リラグルチドは、もともと私たちの体にあるGLP-1というホルモンの働きを補うGLP-1受容体作動薬の注射薬です。食後など血糖値が高い時にだけ膵臓にインスリンを出すように働きかけます。一方で血糖値が低い時には働かないため、リラグルチド単独では低血糖を起こしにくい特徴がある薬です。

脳に働きかけて食欲を少し抑えたり、胃の動きをゆっくりにして食後の急激な血糖上昇を防いだりする作用も知られています。

薬の多くは腎臓を通って体の外に出ていきますが、透析患者さんの場合は腎臓から薬を排泄する力が弱いため、薬が体内に溜まり副作用が強く出ることがあります。そのため、透析患者さんには禁忌とされている糖尿病薬も多いのです。

GLP-1受容体作動薬には種類があり、リラグルチドは「ヒトGLP-1由来」というタイプに分類されます。このタイプは、腎臓ではなく、主に体内の酵素によって分解されるので、腎機能が低下している透析患者さんでも、薬が体内に溜まりにくいと考えられています。

・藤田浩樹 保存期腎不全,透析患者に対するGLP-1 受容体作動薬について――使用の実際と注意―日本透析医会雑誌2021:36(3).520-528
・藤田征弘 羽田勝計 透析患者に対する新しい糖尿病薬―DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬― 日本透析医会雑誌2011:26(3).535-539

注射

透析患者におけるリラグルチドのメリットとリスク

透析患者さんがリラグルチドを使用するメリットとリスクについて説明します。

メリット

リラグルチドは血糖値が高い時にだけインスリン分泌を促すため、単独使用では重篤な低血糖を起こしにくい点が大きなメリットです。また、食欲を抑える作用や胃の内容物をゆっくりと排出する作用があるので食事量の減少や体重改善が期待できます。

リスク

リラグルチドの主な副作用には低血糖や消化器系の症状などがあります。

低血糖

リラグルチドは血糖値が高い時にだけインスリン分泌を促すため、単独使用では低血糖を起こしにくいとされています。しかし、低血糖が起こらないわけではありません。重篤な低血糖症状で意識消失に至る例も報告されています。インスリン製剤やSU薬(スルホニルウレア剤)と併用する場合、低血糖のリスクが増加するおそれもあります。

消化器系の副作用

吐き気(悪心)、便秘、嘔吐、下痢、食欲不振、腹部不快感などが副作用として挙げられています。もともと糖尿病性胃腸障害がある患者さんでは消化器症状が出やすい報告もあるため注意が必要です。


・独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 リラグルチド(遺伝子組換え)

使用時の注意点と医師と相談すべきポイント

リラグルチドを使用する際はご自身の体調の変化に気をつけることが大切です。特に以下の2点に注意し、不安なことがあれば主治医に相談しましょう。

体調の変化

低血糖症状が現れた場合

低血糖症状である、急に力が入らない(脱力感)、強い空腹感、冷や汗、ふるえ、動悸、頭痛、めまい、吐き気などがあれば、すぐにブドウ糖や糖質を含むジュースや飴などをとりましょう。

【医師と相談すべきポイント】

治療を始める前に、今使っている薬(特にインスリンやSU薬)を必ず医師に伝えてください。低血糖のリスクを減らすため、これらの薬剤の減量を検討することがあります。併用薬がある場合は、医師の処方どおりに薬を使うようにしましょう。

胃腸症状が現れた場合

吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、下痢、お腹の張りなどの症状があれば、我慢せずに主治医に相談しましょう。胃腸症状で食事がとれない状態が続くと脱水につながる危険があります。

いつもと違う頑固な便秘、お腹がパンパンに張る、持続する強い腹痛や嘔吐がみられる場合は腸閉塞(イレウス)の可能性も否定できません。このような症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診するか、緊急を争う場合は救急要請が必要です。

まとめ

リラグルチドは、透析治療中の2型糖尿病患者さんの血糖管理のための治療の選択肢の一つです。リラグルチドは腎臓ではなく体内の酵素で分解されるため、透析患者さんに使用されることもあります。単独使用では低血糖を起こしにくい点がメリットですが、副作用として低血糖や消化器症状がみられることがあります。

リスクや注意点を理解し、低血糖のサインがあればブドウ糖を摂取し、気になる消化器症状があれば我慢せずに主治医に相談しましょう。

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