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2025年05月22日

透析患者とプロテイン。正しい摂取方法と注意点とは?

透析を受けている方の中には「たんぱく質を効率よくとるためにプロテインを活用したらいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。たんぱく質は重要な栄養素ですが、腎機能への配慮が必要な透析患者にとって、プロテインの摂取は注意が必要です。

本記事では、透析患者がプロテインを摂取するメリットやプロテインの選び方、リスク管理について解説します。

プロテイン

透析患者がプロテインを摂取するメリット

透析患者は治療中にたんぱく質やアミノ酸が失われやすく、栄養不良に陥るリスクがあります。透析患者のたんぱく質摂取量の目安や透析患者が栄養補助食品としてプロテインを摂取するメリットについてご紹介します。

透析患者のたんぱく質摂取量の目安

腎機能障害があると「たんぱく質は控えなければならない」というイメージがありますが、「透析患者の食事療法基準」によると、たんぱく質の摂取量は0.9~1.2g/kg体重/日とされており、1)健常者の摂取基準と大きな差はありません。

さらに、サルコペニア(筋肉量減少や筋力低下)がある場合は、1.6g/kg/日まで増やすことや、1食あたり25~30gの摂取が目安とされています。1)これは健常者や一般的な透析患者のたんぱく質摂取目安量の約2倍にあたります。

そのため、食事摂取基準どおりにたんぱく質摂取を進めるのではなく、腎機能の状態や栄養の状態、患者の全身状態などを専門的な視点からそれぞれ評価し、個々の状態に応じた柔軟な対応が必要です。

通常の食事から栄養摂取が難しい場合には、栄養補助食品などを用いたプロテイン摂取は医療者の指導のもと、適切な活用が望まれます。

はかり

透析患者のプロテインを含む栄養補助食品摂取についての報告

アメリカで実施された研究では、血清アルブミン値が3.5g/dL以下の透析患者を対象に、透析中にプロテインを含む経口栄養補助食品を1回摂取する取り組みが導入されました。2)

この取り組みを行った施設とそうでない施設を比較したところ、補助食品を摂取した透析患者では、約14ヶ月の追跡期間中に死亡リスクが29%低下していたことが報告されています。2)

この結果から、栄養状態が不良な透析患者におけるプロテイン補助食品の活用は、生存率の向上と関連している可能性があると考えられています。

・1)透析患者の食事療法基準―第61回日本透析医学会学術集会・総会ワークショップ『透析患者の栄養管理の実際』より―透析会誌2017;50(2):133~138
・2)Daniel E.Weiner et al. Oral Intradialytic Nutritional Supplement Use and Mortality inHemodialysis Patients AJKD2014;63(2)p276-285

機能性食品

透析患者向けのプロテインの選び方と摂取方法

基本的には、食事からのたんぱく質摂取が第一に推奨されます。魚、肉、卵、大豆製品などをバランスよく取り入れ、同時にエネルギー量も十分に確保することが大切です。

しかし、実際には食事摂取量が不足している透析患者も少なくありません。BMIの低下や血清アルブミン値の低下など、低栄養の兆候がみられるケースでは、たんぱく質摂取量の指標であるnPCR(normalized Protein Catabolic Rate:標準化たんぱく質異化速度)が0.8g/kg/日を下回るケースもあり、たんぱく質補給を目的とした栄養補助食品の活用が検討される場合もあります。

市販のプロテインを含む栄養補助食品の活用例

実際に、日本国内で行われた報告では、nPCRが1.0g/kg/日以下の透析患者に対し、たんぱく質を強化した栄養補助食品「エンジョイプロテイン」を1日3回、3ヶ月間にわたり経口摂取したところ、nPCR、血清プレアルブミン、RBP(レチノール結合たんぱく)といった栄養指標が改善したことが示されています。3)

米(胚乳)たんぱく質の有用性

新潟大学による臨床試験では、推奨されるたんぱく質摂取量を満たしていない透析患者を対象に、米(胚乳)由来のたんぱく質を含むゼリー状の栄養補助食品を12週間にわたって摂取させたところ、たんぱく質摂取量の指標であるnPCRが有意に増加したことが確認されました。4)加えて、血清リンやカリウム値に有害な影響を及ぼさなかったことから、米(胚乳)たんぱく質は安全性の面でも良好な結果を示しました。4)

透析患者は基本的に食事からのたんぱく質摂取が推奨されますが、低栄養が疑われる場合には、医師や管理栄養士の指導のもとで、個人に合った栄養補助食品を選び、適切に摂取することが有効な場合もあります。プロテインを取り入れたいと考えた場合は、自己判断を避け、必ず医師に相談することが大切です。

・3)中山誠ら 透析患者の補助食品使用による栄養状態改善効果
・4)新潟大学 米(胚乳)タンパク質が透析患者さんの有効な補給タンパク質になることを明らかにしました-透析患者さんにおける低栄養の問題に光明

プロテイン摂取の注意点とリスク管理

透析患者にとって、たんぱく質の摂取は重要ですが、過剰摂取には注意が必要です。フィットネスやスポーツ向けに販売されている市販のプロテイン製品は、吸収が速く設計されており、腎臓に急激な負荷をかけて腎機能を悪化させる恐れがあります。

また、これらの製品にはリンやカリウムが多く含まれていることがあり、高リン血症や高カリウム血症といった合併症のリスクを高める可能性もあります。特にリンの過剰摂取は動脈硬化や骨疾患の原因になることが知られており、注意が必要です。

透析患者がプロテイン製品を取り入れる際には、自己判断で市販品を使用するのではなく、医師や管理栄養士と相談のうえで、成分や摂取量に配慮した適切な選択をすることが大切です。透析患者向けに調整された医療用の栄養補助食品もあり、必要に応じて医療スタッフから情報提供を受けることが可能です。気になる場合は、必ず主治医に相談しましょう。

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まとめ

透析患者にとってたんぱく質は重要な栄養素ですが、基本は日々の食事から摂取することが推奨されます。ただし、低栄養状態にある透析患者では医療機関の判断でプロテインが含まれた栄養補助食品が使用される場合もあります。個人の状態に応じて適切に取り入れることが必要ですので、プロテイン摂取を利用する際は必ず医師や医療スタッフと相談しながら進めましょう。

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