透析中の急変リスクとは?よくある症状と予防のポイント
透析治療は医療機関の管理された中で進められますが、それでも急変は起こることもあります。特に透析中は血圧や心機能、呼吸状態の変化に注意が必要です。万が一に備え、どのような急変が起こり得るのか、そしてどう対応すべきかを知っておきましょう。
透析中によくある急変の症状
透析患者さんの急変は、珍しいことではありません。医療機関の研究では、透析を受けている患者さんが入院中に急変するリスクは、 透析を受けていない患者さんと比べて100倍以上高いことが分かっています。1)
急変の症状
透析中に起こりうる急変には、以下のような症状があります。
・意識消失・心停止
意識が急になくなります。心停止では直ちに心肺蘇生が必要です。
・呼吸停止・呼吸抑制
呼吸が浅く弱くなります。停止した場合は人工呼吸などの対応が必要です。
・血圧低下(ショック状態)
顔色不良、冷汗、強い倦怠感などが現れます。早期対応が重要です。
・徐脈・心室細動(VF)
脈が極端に遅くなる、または致死性の不整脈が生じます。迅速な対応が必要です。
・アナフィラキシーショック
薬剤や透析器材に対するアレルギー反応で全身のショック状態が起こります。
・脳血管障害・消化管出血
意識の変化、嘔吐、便の異常などが現れます。
・1) 釜江直也、植田浩司、井上和久 当院における入院透析患者の急変の予防および早期発見に対する検討 日本急性血液浄化学会雑誌2017.8(1):58〜62,
透析中の急変、主な原因
透析で急変が起こりやすいタイミングと主な原因について説明します。
急変が起こりやすいタイミング
医療機関のデータによると、 透析終了後12~24時間以内に急変が多く発生しています。しかし、透析中や透析後24~48時間後にも急変は起こるので注意が必要です。1)
透析中から透析後48時間までの全期間を通して、急性冠症候群(心臓の冠動脈が狭窄や閉塞を起こす状態)や不整脈の発生がみられます。1)
透析中の急変の原因
以下が、透析中のおもな急変の原因です。
・感染症の重症化
透析患者さんは予備力が低く、感染症が重症化すると急変リスクが高まります。
・心疾患の合併
狭心症や心不全、不整脈などが合併している患者が多く、心血管障害による急変が起こりやすくなります。
・透析後の電解質の変動
透析後に低カリウム血症が発生し、不整脈や心停止を引き起こす可能性があります。
・心機能の障害や代謝異常
左室収縮・拡張障害や代謝障害がある場合は、心不全のリスクが高くなります。
・循環動態の変化
除水によって無痛性心筋梗塞や虚血が起こる場合があります。
・1) 釜江直也、植田浩司、井上和久 当院における入院透析患者の急変の予防および早期発見に対する検討 日本急性血液浄化学会雑誌2017.8(1):58〜62,
透析中の急変を予防するためにできること
急変を予防するには、患者さん・ご家族・医療スタッフの協力体制が必要です。患者さん、ご家族がそれぞれできることをまとめました。
患者さんご自身でできること
・体調の変化を伝える
透析前に体調不良や息苦しさ、胸の痛みなどが少しでもあれば、スタッフに伝えましょう。
・水分・塩分管理を守る
透析間の体重増加を適切に保つことで、一度に除去する水分量を減らし、体への負担を軽減できます。
・薬を指示通りに服用する
血圧や心臓の治療で処方された薬を指示通りに服用し、症状のコントロールを図っておくことで急変の予防につながります。
ご家族ができること
・体調の変化に気づく
顔色が悪い、息苦しそう、反応が鈍いなど、透析後の様子がいつもと違うときは、すぐに医療スタッフへ連絡しましょう。
・緊急時の連絡先を確認する
夜間や休日の急な体調変化に備え、連絡先を事前に確認しておきましょう。
まとめ
透析中の急変は誰にでも起こり得ることです。日々の体調管理と早めの相談、そして医療者との連携が予防と早期対応につながります。患者さん、ご家族と医療スタッフが情報を共有し合うことが大切です。
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