透析患者さんとご家族のための「ダイアライザー」入門ガイド
透析患者さんにとって透析治療に関する知識を知ることは、ご自身はもちろん、ご家族にとっても透析治療を受けるうえでの不安を軽減するための情報となるでしょう。なかでも「ダイアライザー」という言葉を耳にする機会は多いかもしれません。しかし、ダイアライザーの仕組みや役割について詳しく説明を受ける機会は少ないと思います。
本記事では、透析を受けるにあたって知っておきたい「ダイアライザー」について、わかりやすく説明します。
ダイアライザーとは?人工腎臓と呼ばれる理由
ダイアライザーとは、腎臓の主な機能である老廃物や余分な水分の除去を代行する血液浄化器です。腎臓の機能の一部を行うため「人工腎臓」とも呼ばれています。透析治療で血液中の老廃物を除去するためには欠かせない医療機器の一つです。
限られた時間内で効率的に老廃物や水分を除去する必要があるため、人工腎臓と呼ばれるほどの性能が求められます。
ダイアライザーの基本構造と働き
血液透析の基本的な原理は2つあります。「拡散」と「限外濾過」です。それらの機能を支えているのがダイアライザーです。
- 拡散:濃度差を利用して、血液中の老廃物やカリウム・リンなど電解質を透析液側に移動させます
- 限外濾過:圧力差を利用して、余分な水分を透析液側に除去します
ダイアライザーは筒状の構造をしており、その内部には約1万本の細い管(中空糸)が詰まっています。効率的な物質交換を可能にするため、中空糸は内径が約200マイクロメートルと、非常に細くなっています。
ダイアライザーの中で、血液が中空糸の内側を流れ、中空糸の外側を透析液が通ります。中空糸は半透膜と呼ばれる、ある程度小さい分子やイオンが通り抜けられる素材でできており、これを介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液側に移ってゆくのです。
尿毒素や余分な電解質は透析液側に移動する一方で、血球や大きなタンパク質は膜を通過せず体内に残されます。膜に多く用いられる素材は、大きく分けてセルロース系と合成高分子系があります。膜素材ごとに特性があり、除去しやすい物質など様々な違いがあるため、患者さんの状態に照らしてどのダイアライザーを用いるかが決定されます。
ダイアライザーはどんな人が使うもの?
ダイアライザーは、腎臓の機能が低下した方に対して使用される血液浄化器(人工腎臓)です。対象となるのは、慢性腎不全や急性腎不全などで老廃物の排出や水分調整が困難になった方です。
- 慢性腎不全:腎臓の働きが慢性的に著しく低下し、排泄や水分調整ができなくなった状態
- 急性腎不全:一時的に腎機能が大きく低下した状態
腎臓の機能が十分に働かなくなると、体内に老廃物や余分な水分が蓄積し、命に関わる危険な状態に陥ることがあります。慢性腎不全や急性腎不全のように、腎臓の機能が著しく低下した場合には、血液を体外に取り出して浄化する人工透析が必要になります。このとき、血液をきれいにする装置として使用されるのがダイアライザーです。
さらに近年では、新生児や乳児に対応した小型の装置や、災害時・救急現場での使用を想定した可搬型の人工腎臓の開発が進められており、使用対象は多様化しています。
・小久保謙一,栗原佳孝,小林こず恵,森口武史,松田兼一,小林弘祐.細径化した中空糸膜を用いた血液浄化器の開発.人工臓器.2014;43(3):238–241.
まとめ
ダイアライザーは、腎臓の代わりに血液中の老廃物や余分な水分を除去する「人工腎臓」とも呼ばれる血液浄化装置です。ダイアライザーの内部には約1万本の中空糸が詰まっており、半透膜を介して拡散・限外濾過による血液浄化を行います。
慢性腎不全や急性腎不全など、腎機能が低下した患者さんに対して使用されるほか、近年では小児向けや災害時に使用される可搬型の透析装置の研究も進められており、より柔軟な治療が期待されています。
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