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2020年10月13日

【意外と知らない】透析治療と耳の関係

飛行機に乗っているときやトンネルに入るときに、耳が詰まったような感じになる経験がある人は多いと思います。これは外気の気圧の変化によって、耳管が広がったり閉じたりしているために起こる症状です。

唾液を飲み込んだり、あくびをしたりするとほとんどの人は元に戻ります。

しかし耳管開放症や耳管狭窄症になると唾液の飲み込みやあくびでは治らず、耳閉感が継続してみられます。耳管開放症や耳管狭窄症と透析との関係について学んでいきましょう。

 

耳管開放症・耳管狭窄症とは

耳管は鼓膜の奥にあり、耳と鼻をつないでいる約3.5㎝から約4㎝の長さの管です。耳管は外の気圧の変化に応じて、耳の中の圧を調整する働きをしています。

耳管は通常閉じていますが、嚥下(飲み込み)やあくびなどで開き、耳の中に空気が流れ込むことで鼓膜の外側と耳の中の圧が同じになります。

耳管開放症や耳管狭窄症になると耳管による耳の中の気圧調整が上手くいかなくなり、耳閉感などの症状が現れます。

耳管開放症

耳管開放症は、耳管が常に開いている状態です。ストレスや急激な体重低下、睡眠障害、顎関節症、体調不良、鼻をすする癖などが原因となって起こります。

耳管開放症では、次のような症状がみられます。

  • ・自分の声が大きく響く(自声強調)
  • ・自分の呼吸音が響く
  • ・耳が塞がった感じがある、耳がボーっとした感じがする
  • ・めまい
  • ・耳鳴り
  • ・難聴
  • ・横になる、頭を下げると症状が和らぐ
 

耳管狭窄症

耳管狭窄症は、耳管が狭くなる状態です。副鼻腔炎や風邪をひいた後に起こる耳管の炎症、アデノイド肥大、上咽頭腫瘍などが原因となって起こります。

耳管狭窄症では、次のような症状がみられます。

  • ・耳が詰まった感じ(耳閉感)
  • ・継続すると滲出性中耳炎になる
  • ・自分の声が大きく響く(自声強調)
 

透析患者さんと耳の関係

透析と耳管開放症の関係

透析と耳管開放症の関係の研究では、透析後に耳管開放症を発症した人は147人中13人(8.8%)という結果が報告されています。

日本における耳管開放症の有病率の調査では0.6%という報告があるため、全体における耳管開放症の有病率に比べて、透析患者さんでは耳管開放症を発症しやすいということが言えます。

耳管開放症は、もともと耳管が開きやすい体質にさまざまな要因が加わることで起こると言われています。透析患者さんが耳管開放症を発症するのは、透析治療による除水で脱水が起こり、耳管を圧迫している静脈が縮んで耳管が広がるからです。

難聴の症状があると、耳管開放症の症状である自分の声が大きく響く症状に気づきにくくなります。耳の詰まった感じや違和感があったときにははやめに耳鼻科を受診しましょう。

 

参考文献:難治性耳管閉鎖障害の病態解明と新治療戦略

透析と耳管狭窄症の関係

透析と耳管狭窄症との関係を示した報告はありませんが、透析患者さんで鼻炎や副鼻腔炎、アデノイド肥大などの耳鼻科疾患を持っている人は、耳管狭窄症になりやすいと言えます。耳管狭窄症の症状を放っておくと滲出性中耳炎をおこし、聞こえが低下します。

滲出性中耳炎が慢性的に起こるようになると、感染時に急性中耳炎を起こしたり、鼓膜や内耳の骨が破壊される真珠腫性中耳炎、鼓膜が破けて穴が残る穿孔性中耳炎、鼓膜が鼓室に癒着する癒着性中耳炎などに進行したりして、手術が必要となる場合もあります。

耳管の入り口にある軟骨の異常や上咽頭の腫瘍が原因で耳管狭窄症が起こることもあるので、耳の閉塞感や難聴などの症状がある場合は耳鼻科を受診しましょう。

 

透析患者さんと難聴

まとめ

透析では身体の中の余分な水を取り除くため、身体が脱水状態となり耳管を圧迫している静脈叢のボリュームが減って耳管が広がります。

そのため、透析後には耳管開放症の症状がみられることがあります。耳管開放症と耳管狭窄症ではどちらも耳閉感がみられますが、耳管開放症は横になることや頭を下げることで症状が軽減するのが特徴です。

鼻炎や副鼻腔炎などの鼻の疾患を持っている人は耳管狭窄症になるリスクもあります。

放っておくと滲出性中耳炎が慢性化して継続した治療が必要となるため、耳閉感や耳の不調を感じたときには早めに耳鼻科を受診しましょう。


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