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2019年02月22日

透析導入期は要注意!不均衡症候群について知ろう

不均衡症候群は血液透析導入時期にみられる合併症です。

体内の変化によって、頭痛や吐き気といった症状がみられます。今回は、不均衡症候群とはどのような合併症であるのか、また、不均衡症候群の予防策について詳しく解説していきます。

さっそくみていきましょう。

     

不均衡症候群とは

不均衡症候群とは血液透析の導入期にみられる血液透析特有の合併症です。

血液透析では、透析機器を通して血液中の老廃物や過剰な水分を除去します。腎臓の機能が低下した患者さんにとっては、血液透析はなくてはならない治療ですが、血液透析による体内で起こる環境の変化によって、様々な合併症が起こる可能性があります。

血液透析の合併症のひとつである不均衡症候群は、血液透析を導入してからまだ身体が透析に慣れていない時期に起こり、頭痛や吐き気、嘔吐などの症状が見られる合併症です。

     

不均衡症候群の主な症状

では、不均衡症候群では実際にどのような症状がみられるのでしょうか。

不均衡症候群は、血液透析を始めてから数回の期間にみられることが多く、透析の最中から透析終了後12時間以内に、以下のような全身症状や中枢神経症状が現れます。

     

不均衡症候群の全身症状

  • 血圧の変動
  • 筋けいれん
  • こむらがえり
  • 身体のだるさ
  • 脱力感
     

不均衡症候群の中枢神経症状

  • 頭痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 不安感
  • 焦燥感
     

不均衡症候群の中枢神経症状

個人差はありますが、通常は血液透析を数回経験して身体が慣れてくると、症状はみられなくなることが多いです。

     

不均衡症候群による頭痛

不均衡症候群の起こる原因

不均衡症候群で起こる主な症状が分かったところで、不均衡症候群の起こる原因についてみていきましょう。不均衡症候群は、血液透析で起こる体内の環境の変化に身体が慣れていないことが主な原因で起こります。

血液透析を行うと、身体にどのような変化が起こるのでしょうか?不均衡症候群の起こる詳しい原因を知るために、まずは血液透析の仕組みについて理解しましょう。

     

血液透析の仕組み

腎臓の機能が低下すると身体の中の老廃物や水分が排泄できず、身体に溜まっていきます。血液透析は、身体の中に溜まった老廃物や水分を腎臓の代わりに排泄し、体内の電解質・水分バランスを整える治療法です。

血液透析では、血液の通り道であるシャントを介して、いったん血液を外に取り出します。取り出した血液はダイアライザーという透析器を通り、身体に不要な老廃物や余分な水を除去します。最終的には電解質・水のバランスも調節し、再び身体に血液を戻します。

血液を透析器に通す前と、通してから再び体内に戻した後では、不要なものが取り除かれ、電解質や水のバランスが変わり、身体の中の環境が大きく変化することになります。

     

不均衡症候群の起こる仕組み

では、なぜ身体の中の環境が変化すると頭痛や吐き気などの症状が起こるのでしょうか?

血液透析では、まず最初に血液内の尿毒素物質などの老廃物を除去します。老廃物が除去されたことで、細胞内液中は、細胞外液中に比べて老廃物が少ない状態となります。

このように、老廃物の量に内側と外側で差が生じることが、不均衡症候群の起こる原因です。

     

細胞内外で老廃物・電解質の不均衡が起こる

透析前には、細胞内液と細胞外液の老廃物はほとんど均等に存在していますが、透析中には老廃物が除去されて細胞外液の浸透圧が低くなり、細胞内液と細胞外液との間で浸透圧の差が生じます。

特に、脳の組織では老廃物が除去されにくく、細胞外液と細胞内液との間で老廃物や電解質の不均衡が大きくみられることとなります。

浸透圧が高いままの脳組織は細胞外液とのバランスをとろうとして、一時的に水をため込んで濃度を薄めようとします。そうして水をため込んだ脳組織はむくみを生じ、脳圧が高くなって頭痛や吐き気などの症状が起こると考えられています。

     

心臓病の検査

不均衡症候群の予防方法

透析導入時期にみられるとされている不均衡症候群はどうすれば予防できるのでしょうか?医療機関側で行われる対策と患者さん自身で行える対策に分けてみていきましょう。

    

医療機関側で行われる予防策

医療機関側で行われる予防策には血液透析の効率の調整、薬物療法、浸透圧物質の使用があります。

不均衡症候群への対策1:血液透析の時間・回数の調整

不均衡症候群の予防策としては、徐々に血液透析に身体を慣らしていくために、初めは身体への負荷を下げ、身体の中で起こる変化をなるべく小さくしてあげることが大切です。

通常、血液透析は1回に3~5時間、週3回行いますが、血液透析を始めたばかりの時は身体を慣らすために1回に2~3時間の短い時間から始めます。身体が血液透析に慣れてきたら通常の3~5時間の血液透析を週3回行っていきます。

そのほか、身体から取り出した血液を1分間にダイアライザーに流す量(血液流量)を少なくすこと、ダイアライザーを比較的小さなものにすること、たくさん老廃物が溜まっているときは一度にたくさん除去するのではなく、短い時間で透析回数を増やすことなどが予防策として行われます。

また、医師の診断により、鎮痛剤などが処方されることもあります。

    

不均衡症候群への対策2:薬物療法

吐き気や頭痛などの症状に対しては医師の判断により鎮痛剤や制吐剤が処方されることがあります。頭痛や吐き気などの症状が現れたら我慢せずに看護師や医療者に伝えましょう。

    

不均衡症候群への対策3:浸透圧物質の使用

不均衡症候群は細胞外液と細胞内液との浸透圧の差で生じるとされているので、身体に無害な浸透圧物質を透析中に補い、老廃物が除去されて低くなった細胞外液の浸透圧を細胞内液の浸透圧に近づけることが行われます。

    

患者さん自身で行える予防策

患者さん自身が行う予防策としては、食事・水分制限を守ること、透析後に安静を保つことが大切です。また、透析中・透析後の体調の変化を感じたらすぐに伝えるようにしましょう。

ポイント1:食事制限、水分制限を守る

指導されている食事制限、水分制限を守ることが大切です。食事制限や水分制限を守らずに水分や塩分を過剰に摂ると、身体の中の老廃物や水分がたくさん貯まります。

血液透析で多くの老廃物や水分を除去しなければならなくなり、細胞内外の浸透圧の差が大きくなって身体への負担が増します。食事量・水分量をしっかり守るようにしましょう。

ポイント2:透析後の安静

血液透析後は身体の中で浸透圧の変化が起こり、身体が慣れてない状態です。しばらく安静にして過ごし、身体への負担を小さくしましょう。

頭痛や吐き気がひどいときは薬物療法が実施されることもあります。血液透析の導入時期には不均衡症候群や血圧の低下や上昇、不整脈、筋けいれんなどが起こりやすく、それらの合併症が起こることを想定して身体への負担を考え、血液透析の時間や負荷が調整されます。

ポイント3:体調の変化を感じたらすぐに伝える

透析中や透析後に体調の変化を感じたら我慢をせずに看護師や医療者に伝えましょう。

不均衡症候群への対策

まとめ

不均衡症候群は、細胞内液と細胞外液との間で生じる浸透圧の差が原因となって生じます。まだ身体が慣れていない血液透析を始めたころに起こりやすく、数を重ねるとだんだん症状はみられなくなります。

モニターで全身状態を確認しながら血液透析を行うことでも、不均衡症候群を軽減・予防することができます。不均衡症候群の症状がある場合には、透析を行う医院にまずはその旨を伝えるようにしましょう。

また、日常生活での食事や水分の制限を守り、自身でも不均衡症候群を予防するように心がけましょう。


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