透析中のつらいかゆみ…おすすめの塗り薬と対処法
透析治療を受けている方の中には、「夜も眠れないほどかゆい」と悩まれている方も少なくありません。特に乾燥する季節や、透析後に強くかゆみを感じるケースが多く見られます。本記事では、透析患者さんにかゆみが起こりやすい理由や、かゆみのタイプ別に適した塗り薬、市販薬と処方薬の選び方をわかりやすく解説します。
透析患者に「かゆみ」が起こりやすい理由
透析中にかゆみを感じやすくなる背景には、いくつかの理由があります。
皮膚の乾燥
透析患者さんは腎機能の低下によって皮膚の保湿機能が衰え、水分や皮脂の分泌量が減るため、肌が乾燥しやすい状態です。肌が乾燥すると、外からの刺激から肌を守るバリア機能が低下するので、衣服の擦れや外気などのわずかな刺激によってかゆみを感じるようになります。
老廃物の蓄積
腎機能が低下すると、通常であれば尿として排出されるはずの老廃物(尿毒素)が体内に蓄積されます。老廃物の中には、血中濃度が増加して、かゆみに関連する物質が含まれていると考えられています。
オピオイドが関与するかゆみ
内因性オピオイドが異常に活性化すると中枢性のかゆみが強くなります。透析患者さんでは、脳内の内因性オピオイドのバランスが乱れ、かゆみを抑えるはずの受容体の働きが弱まり、反対にかゆみを強める受容体の働きが強くなるといわれています。そのため、皮膚に明らかな異常がなくても、強いかゆみを感じることがあります。
どんな塗り薬が効果的?かゆみタイプ別の対処法
かゆみの原因によって、適した塗り薬は異なります。以下にタイプ別の対処法をまとめました。
皮膚の乾燥によるかゆみ
角質層に水分や油分を補い、バリア機能を保つための保湿が基本的な対処法です。皮膚の乾燥が原因の場合は、ヘパリン類似物質を含む保湿剤や尿素を含む保湿剤、皮脂が足りない場合は白色ワセリンが用いられます。
アレルギー反応によるかゆみ
透析患者さんは、ヒスタミンなどのアレルギー物質に過敏になっていることがあり、抗ヒスタミン剤の塗り薬が使われます。
皮膚のバリア機能の低下によるかゆみ
透析患者さんの皮膚は薄くなり、皮膚表面がアルカリ性に傾くことで生じるかゆみには、酸性水や弱酸性ローションでのスキンケアを行います。
市販薬と処方薬、どちらを選べばいい?
かゆみがあるとき、市販薬で対応するべきか、病院で処方薬をもらうべきか迷うことがあるかもしれません。市販薬と処方薬の違いと、選び方の目安について解説します。
市販薬と処方薬の違い
処方薬は医師の診察にもとづいて処方される薬で、症状に応じて薬の種類や用量、服用回数などが決められます。医師や薬剤師による管理が必要で、指示された通りに服用することが前提です。
市販薬は薬剤師や登録販売者のアドバイスのもとに、ドラッグストアなどで自分の判断で購入できる薬です。軽い症状や一時的な不調に用いられる場合が多く、手軽に手に入れやすいという特徴があります。
市販薬と処方薬の選び方
日常的なスキンケアとして使用する弱酸性ローションは市販薬で購入できます。また、ヘパリン類似物質や尿素を含む保湿剤も市販されています。ただし、出血傾向のある方や血液疾患のある方は使用できません。また、使用前に医師や薬剤師への相談が必要です。
かゆみの原因は人によって異なり、原因に対応した薬を使うことが大事です。合併症や服用中の薬との飲み合わせも考慮する必要があります。特に透析を受けている方は複数の薬を使用しているケースが多いため、自己判断で市販薬を選ぶ前に主治医に相談し、処方薬の使用を検討することをおすすめします。
まとめ
透析中のかゆみは、乾燥や老廃物の蓄積、アレルギー反応など、複数の要因が考えられます。毎日のスキンケアは市販の弱酸性ローションなどを使用すると良いでしょう。原因に応じて保湿剤や塗り薬を適切に使い分けることで、かゆみを軽減できる場合があります。適した薬を使用するためにも医師に相談することが大切です。
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