eGFRとは？腎臓の働きを知り、透析を予防するために

eGFRとは？計算方法と基準値

eGFRとは推算糸球体濾過量を指し、腎臓の機能を評価する重要な指標です。腎臓は体内の老廃物を排出し、体液や電解質のバランスを維持する役割を担っています。eGFRの値を知ることで、腎臓の健康状態を把握し、慢性腎臓病（CKD）の早期発見や進行予防につなげることが可能です。

eGFRは腎臓が1分間にどれだけの血液を濾過できるかを示します。年齢、性別、血液中のクレアチニン濃度（クレアチニン値）から推算できます。

男性、女性それぞれのeGFRの推算式は次のとおりです。

• 男性：eGFR（ml/分/1.73㎡）＝194×血清クレアチニン値：Cr（mg/dl） －1.094×年齢（歳） －0.287
• 女性：eGFR（ml/分/1.73㎡）＝194×血清クレアチニン値：Cr（mg/dl） －1.094×年齢（歳） －0.287×0.739

健康な成人のeGFRは100 ml/分/1.73㎡前後です。eGFRが60 ml/分/1.73㎡未満の状態が継続してみられる場合はCKDと診断される可能性があります。eGFRとCKDの重症度（病期）は次のとおりです。

出典：厚生労働省「慢性腎臓病（ＣＫＤ）シンポジウム」プログラム　抄録集全体版より

・一般社団法人日本腎臓学会　CKD診療ガイド2024
・厚生労働省「慢性腎臓病（CKD）シンポジウム」プログラム　抄録集全体版

eGFRが低下するとどうなる？考えられる原因と病気

eGFRの低下は腎機能の低下を示し、以下のような原因（病気）が考えられます。

糖尿病

糖尿病は腎臓の細い血管にダメージを与え、腎機能の低下を引き起こします。実際に、日本においては透析が必要になる原因の1位であり、4割を占めるのが糖尿病性腎症です。（出典：わが国の慢性透析療法の現況（2023年12月31日現在））

高血圧

高血圧は腎臓に負担をかけ、腎機能の低下を招く原因の一つです。腎機能が悪くなると血圧調整がうまくいかずに高血圧が悪化するという悪循環に陥ります。高血圧を放置すると、腎臓の働きが正常な人でも腎機能が少しずつ悪くなり「腎硬化症」と呼ばれる状態になります。実際に、腎硬化症は末期腎不全になる2番目に多い原因です。（出典：わが国の慢性透析療法の現況（2023年12月31日現在））

慢性糸球体腎炎

腎臓の糸球体に炎症が持続的に起こり、徐々に腎機能が低下する病気です。主な原因は免疫の異常とされています。初期段階では自覚症状がほとんどなく、定期的な健康診断でeGFRを測定し、早期発見に努めることが重要です。

多発性嚢胞腎

腎臓内に多数の嚢胞が形成される遺伝性疾患です。嚢胞が増えると腎機能が徐々に低下し、透析が必要になる場合があります。

尿細管間質性腎炎

腎臓の尿細管や間質に炎症が生じる疾患で、薬剤の副作用や感染症、自己免疫疾患などが原因となります。急性の場合、発熱や発疹、腰痛などの症状が現れ、慢性化すると徐々に腎機能が低下していきます。

・日本透析医学会　わが国の慢性透析療法の現況
・一般社団法人日本腎臓学会　4.急性腎障害と慢性腎臓病
・東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター 尿細管間質障害

eGFRが低下したら見直したい生活習慣と治療法

eGFRの低下は腎機能の低下を示します。生活習慣の改善や適切な治療によって、腎機能の低下の進行を遅らせることが可能です。

生活習慣の改善

減塩

塩分の摂取を控えることで、高血圧を予防し、腎臓への負担を軽減します。

適切なたんぱく質の摂取

たんぱく質の過剰摂取は腎臓に負担をかけるため、医師と相談しながら適量を守ることが重要です。

カリウム・リンの管理

腎機能が低下すると、カルシウムやリンの排出が難しくなるため、摂取量に注意が必要です。

適度な運動

無理のない範囲での運動は、血圧の安定や全身の健康維持に役立ちます。

禁煙と節酒

喫煙は腎機能の悪化を進行させるため禁煙が重要です。過度の飲酒も腎臓に負担をかけるため、節酒が必要です。

十分な睡眠とストレスコントロール

睡眠不足や過度なストレスは腎臓に悪影響を及ぼします。十分な睡眠とストレスをためすぎないようにコントロールしましょう。

医療機関で行う治療

腎臓の機能低下を抑えるためや合併症のコントロールのための薬物治療を行います。主な治療として、血圧や血糖のコントロール、リン・カルシウム代謝の調整、貧血の改善、電解質のコントロールなどを行います。服薬は自己判断での服用や中止は避け、医師の指示に従いましょう。

・慶応義塾大学病院KOMPAS　慢性腎臓病

透析開始の目安となるeGFRの値

一般的には、eGFR値が15ml/分/1.73㎡未満になると、透析の必要性が検討されます。ただし、実際の導入は腎不全の症状や日常生活の活動性、栄養状態などを考慮し、保存的治療で管理が難しい場合に決定されます。

また、腎不全の症状が見られても、eGFRが8ml/分/1.73㎡以上であれば、保存的治療での経過観察が可能な場合があります。ただし、eGFRが2ml/分/1.73㎡未満に低下する前に透析を開始することが望ましいとされています。

・一般社団法人　日本透析医学会　維持血液透析ガイドライン：血液透析導入 4. 血液透析導入のタイミング 2013；46（12）p.1134-1146

まとめ

eGFRとは腎臓の機能を評価する重要な指標です。定期的な検査により、早期発見や進行予防が可能となります。生活習慣の改善や適切な治療を行うことで、腎機能の低下の予防が期待できます。健康診断などでeGFR値の低さを指摘された場合は腎臓内科、内科などを受診し、適切な治療を受けましょう。