透析患者さんが気をつけたいメガネ選びと視力の変化について
透析患者さんではもともとの目の病気や透析の影響により、視力の変化や目の症状を感じる場合があります。起こり得る目の病気や透析によって起こる影響を知っておき、視力の変化に早めに気づき、対策をとれるようにしておくことが大切です。透析患者さんがメガネを選ぶ際に気をつけたい点についてもご紹介します。
透析と視力の意外な関係
透析患者さんは高血圧や糖尿病などを合併していることが多く、もともと視力低下をきたす目の障害がある場合も少なくありません。透析による電解質の変動や加齢の影響で症状が悪化し、視力低下がみられる場合もあります。また、透析により目がかすむなどの視力低下の症状がみられる場合もあります。
白内障
目の中のレンズである水晶体が濁る病気で、加齢や糖尿病の合併などが原因で起こります。進行すると視力低下をきたします。透析患者さんでは、透析による電解質の変動などの影響で加齢に伴い、白内障が進行しやすいのが特徴です。
糖尿病網膜症
糖尿病によって網膜の毛細血管が傷つき、出血やむくみ、新しい血管(新生血管)ができることで視力が低下していく病気です。進行すると失明する場合もあります。透析が必要になる段階の糖尿病患者さんは、すでに進行した糖尿病網膜症を合併している場合も少なくありません。
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症では網膜の静脈が詰まり、目の奥で出血やむくみが起こります。高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持つ人や透析患者さんにも比較的よく見られる目の障害の一つです。透析患者さんは血管が細くなりやすく、電解質の変動や透析の影響で血液が濃くなり、血管が詰まりやすい状態になっています。進行すると、新しい異常な血管(新生血管)ができて出血を起こし、視力が大きく低下することもあります。
緑内障
眼圧の上昇により視神経に障害をきたし、視野狭窄や視力低下をきたす病気です。透析により、眼圧上昇が起こる場合があります。緑内障が進行すると、視神経の萎縮が起こり、視野狭窄や視力低下も進みます。
非裂孔原性網膜剥離
高血圧で目の奥にある網膜を支える血管(脈絡膜)が障害を受けると、血流が悪くなったり血管の壁が傷んだりして網膜が剥がれることがあります。視力低下が起こってから気づかれる場合も少なくありません。
網脈絡膜萎縮黄斑変性
長く透析治療を受けている患者さんは、特別な目の病気の既往がなくても、目の奥にある網膜や脈絡膜が傷んで萎縮し、視力低下や視野の異常が起こる場合があります。とくに網膜の中心の黄斑が変性すると、物がゆがんで見えたり、視界の中心が暗くなったりします。
透析中の一時的な視力の変化
透析中の眼圧上昇により、目の痛みや目のかすみなどがみられる場合があります。
・黒川智子 長期透析患者の視覚障害 透析と視覚障害 2003;18(3)
透析後に目がかすむ・見えにくいと感じたら
透析中には体内の水分を除去するため、血中の電解質が変動して急激に眼圧が上昇し、目の痛みや目のかすみなどがみられる場合があります。また、血圧低下により、目がかすむこともあります。
目のかすみ、視界がぼやける、目が痛いなどの症状が透析中に見られたら、すぐに医療スタッフに知らせましょう。視力低下が起こってからでは、視力の回復は難しくなります。視力低下や目の障害が進行する前に眼科を受診して適切な治療を受け、視力低下の進行を予防しましょう。
・黒川智子 長期透析患者の視覚障害 透析と視覚障害 2003;18(3)
透析患者さんは知っておきたいメガネの選び方
透析患者さんがメガネを選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
眼科で定期的な視力検査を受ける
透析患者さんは目の障害が進行する場合があるので定期的に眼科で検査を受け、目の状態に応じた適切な処方を出してもらうことが大切です。
軽量でずれにくいフレーム
透析患者さんは顔にもむくみが生じることもあり、透析治療中には長時間の座位や臥位で過ごします。長時間かけていても負担の少ない軽量でずれにくいフレームが適しています。障害者総合支援法などの制度を使用すると、メガネの購入費の支給を受けられる場合があります。
まとめ
透析患者さんにとって、視力低下は日常生活の質に関わります。透析患者さんがもともと抱えている目の病気や透析による眼圧の上昇や血圧の低下が視力に影響する場合もあります。そのため、日ごろからの定期的な眼科受診で目の状態をチェックし、視力検査を受けることが大切です。メガネを選ぶ際も身体への負担を考慮したフレーム選びが快適な生活につながります。
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