透析中に酢の物はOK?体への影響と安全に食べるポイント
透析治療を受けている方にとって、毎日の食事管理は大切です。さっぱりしていて健康的に思える酢の物も、使う食材によっては注意が必要です。この記事では、透析患者が酢の物を食べるときの体への影響や注意点、安全に楽しむためのポイントをわかりやすく解説します。
酢の物が透析患者の体に与える影響
一見ヘルシーに思える酢の物も、使用する食材によって透析患者にとっては注意が必要なものがあります。特に意識したい栄養素であるカリウム、リン、塩分について解説します。
カリウムによる影響
透析患者は腎機能が低下しており、体内のカリウムを排出しにくい状態です。血液中のカリウムが高くなる高カリウム血症は、不整脈や心停止を引き起こすリスクがあります。きゅうり、わかめ、もずく、トマトなどは注意が必要な食材です。また、調味料として使用する穀物酢(100gあたり4mg)、米酢(100gあたり16mg)など、酢にもカリウムが含まれているため、使用量にも配慮が必要です。
リンによる影響
リンを摂り過ぎると骨がもろくなったり、血管が石灰化したりするリスクが高まります。酢の物に使う食材では、海藻類(わかめ、もずく、ひじき)や魚介類にリンが多く含まれています。これらの食材を使った酢の物は、食べる量や頻度に注意が必要です。
塩分による影響
酢の酸味が味のアクセントになるため、しょうゆや塩などの塩分を控えても美味しく食べられます。塩分制限が必要な透析患者には、酢を上手に取り入れましょう。
きゅうり酢・わかめ酢など代表的な酢の物と注意点
酢の物といっても食材はさまざまです。ここでは、きゅうり酢・わかめ酢などの代表的な酢の物と透析中に注意したいポイントを紹介します。
きゅうりの酢の物
きゅうりは酢の物の定番食材ですが、生のきゅうり100gあたり約200mgのカリウムが含まれています。100gあたり、三杯酢には2.0g、二杯酢には6.4g、すし酢には6.5g、ポン酢には5.8gの食塩が含まれています。
注意したいポイント
- きゅうりは輪切りにし、水にさらすことでカリウムを減らす
- 味付けには塩分量の多いすし酢やポン酢は避け、塩分量に注意する
わかめの酢の物
わかめもカリウムとリンを多く含む食材です。乾燥わかめは水で戻すとカリウムが一部抜けますが、それでもカリウム含有量は100gあたり430mgです。リン含有量は100gあたり300mgです。
注意したいポイント
- 水で戻した後、軽く茹でて湯を捨てることでカリウムを減らす
- 食べる量や食べる回数に注意する
もずく酢
市販品のもずく酢は手軽に食べられる酢の物です。しかし、多くの市販品には砂糖やしょうゆ、だしなどの調味料が加えられており、思った以上に塩分を含んでいる場合があります。
注意したいポイント
- 塩抜きのもずくを使用する
- 柑橘系の果汁をプラスして風味を加え、塩分を抑える
酢の物を取り入れるときの工夫と適量の目安
透析患者が酢の物を食べるときに知っておきたい工夫と適量の目安についてお伝えします。
カリウムやリンを減らす調理の工夫
酢の物に使う野菜や海藻に含まれるカリウムやリンは、次のひと手間で減らすことができます。
- 水にさらす:薄切りにした野菜を10〜15分水にさらし、途中で水を2〜3回替える
- 茹でこぼす:わかめやもずくなどの海藻類は、軽く茹でて茹で汁を捨てる
水にさらしたり茹でこぼしたあとは、水気をよく切ることで水っぽさを抑え、調味料の使い過ぎも防げます。
調味料と味つけの工夫
調味料の選び方でも、塩分を抑えながら風味を引き出すことができます。
- 柑橘果汁をプラスする:レモンやすだちの酸味を足すことで、塩分控えめでも風味が加わっておいしく食べられます。
- 市販の場合は少量にする:三杯酢などの市販品は塩分が多い場合があるため、少量にとどめ、なるべく自分で塩分量を抑えて作ると調整しやすくなります。
適量の目安
透析患者の1日のカリウム摂取目安は2000mg以下とされています。病院の透析食の酢の物レシピでは、小鉢1皿約30〜50g程度の量で設定されたレシピが多くみられます。透析食レシピは参考になるでしょう。
酢の物の量だけを気にするのではなく、1日の食事全体でカリウム・リン・塩分のバランスを整える意識を持ちましょう。食事記録アプリなどを活用すると、自分の食事傾向を客観的に見直せます。
また、透析効率や残存腎機能、年齢、検査結果によって適切な摂取量は異なります。主治医や管理栄養士と相談し、自分に合った食事プランを立てましょう。
まとめ
酢の物は塩分が少なく副菜に取り入れやすい一方で、使う食材によってはカリウムやリンが多く含まれます。水にさらす・茹でこぼす・調味料の塩分を控えるなどの調理工夫や食事全体のバランスで量を調整することでカリウム、リン、塩分の摂り過ぎを予防できます。食材や体調によって適した摂取量は異なります。食材や適量、食べる頻度に迷うときは、主治医や管理栄養士に相談し、アドバイスを受けましょう。
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