透析中に血圧200?考えられる要因と注意点
透析患者が高血圧であることは多く、注意すべき合併症です。特に血圧が200mmHgを超える場合は、命に関わる重篤な症状や疾患を引き起こすおそれがあり、早急な対応が必要になります。透析患者の血圧が200mmHgになる原因や対処法をわかりやすく解説します。
透析患者の血圧が200になるときに考えられる原因
透析患者が高血圧になる主な原因は、腎機能の低下に伴う複数の要因が関与しています。
・藤田浩樹 保存期腎不全,透析患者に対するGLP-1 受容体作動薬について――使用の実際と注意―日本透析医会雑誌2021:36(3).520-528
・藤田征弘 羽田勝計 透析患者に対する新しい糖尿病薬―DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬― 日本透析医会雑誌2011:26(3).535-539
体内に体液が過剰に溜まる
腎臓の機能が低下すると、体から排出できなかった水分や塩分が体内にたまります。その結果、血液量が増えて血圧が上がります。水分や塩分の摂りすぎが主な原因です。
ドライウェイトの設定が高め
透析後の理想体重であるドライウェイトが高めに設定されていると体内に余分な水分が残り、血圧が上昇しやすくなります。
ホルモンの過剰分泌
腎臓から分泌されるレニンというホルモンが過剰になると、強力な昇圧物質アンジオテンシンが増え、血圧が上がります。
自律神経の乱れ
透析による急な体液変化や尿毒素の影響で自律神経が乱れると、血管の収縮・拡張の調整がうまくいかず、血圧が不安定になります。
その他
動脈の石灰化や、貧血治療で使うエリスロポエチンの影響でも血圧が上昇することがあります。
・関連記事:透析患者の平均血圧は?高血圧や低血圧になった場合の対処法
・関連記事:ドライウェイトって?透析の基礎について知ろう
・医療法人社団豊正会 大垣中央病院 透析患者の血圧管理|高い・低い原因と目標値、日常生活の注意点
透析患者が血圧200を放置するとどうなる?
収縮期血圧が180mmHgを超えるとⅢ度高血圧に分類され、至急、かかりつけ医などの受診が必要な状態です。高血圧性脳症、脳血管障害、急性心不全、大動脈解離、冠動脈疾患、急性腎障害などの脳や心臓、腎臓、大きな血管などに急性の障害を引き起こす高血圧緊急症のリスクが高くなります。
高血圧緊急症ではそれぞれ次の症状が見られます。
- 高血圧性脳症:頭痛や吐き気・嘔吐、視力障害、意識障害、けいれん
- 脳血管障害:四肢に力が入らない、麻痺がある、感覚障害、意識障害、ろれつが回らない、頭痛
- 急性心不全:チアノーゼ(唇や手足が青紫になる)、呼吸困難
- 大動脈解離:分枝血管の詰まりや滞り、胸や背中の痛み
- 冠動脈疾患:胸痛、不整脈、息切れ、疲れやすさ、むくみ、動悸などの心不全症状
血圧が急上昇したときの対応と受診の目安
血圧が急上昇した場合の対応と受診の目安をお伝えします。
すぐに救急車を呼ぶべき症状
- 激しい頭痛
- 突然の高熱
- 冷や汗をともなう吐き気
- 立てないぐらいのふらつき
- ろれつが回らない
- 手足のしびれ、力が入らない
- 視覚異常(見える範囲が狭い、二重に見える)
- 胸や背中の痛み、息苦しさ
- 顔色がひどく悪い
- 意識障害
- けいれん
など
症状がない場合の対応
血圧が急上昇した場合は、いったん安静にして、5分後にもう一度血圧を測りましょう。再測定でも通常の血圧よりも高い場合は主治医にすみやかに連絡しましょう。
日常で気をつけたいポイント
家庭血圧の測定
診察室では140/90mmHgですが、自宅での血圧が135/85mmHg以上の場合、高血圧とされます。朝夕の血圧を測定し、記録をつけることで変化を早く把握できます。診察時には主治医に記録を提示しましょう。
体重・水分の管理
透析間の体重増加は、中1日ならドライウェイトの3%以内、中2日なら5%以内が目安です。水分を摂りすぎないよう、喉が渇く原因となる塩分の摂取を控えることが大切です。
塩分制限
透析患者の塩分摂取目安は1日6g未満です。塩分を控えることで、むくみや高血圧を予防できます。
生活習慣
運動習慣を持つ、野菜や果物を積極的に摂り、脂肪やコレステロールを控えた食事をとる、ストレスをコントロールする、節酒、禁煙などの生活習慣を心がけましょう。
降圧薬の調整
自己判断での服薬量の増減は危険です。医師に処方された降圧薬は用法用量を守って飲みましょう。
まとめ
透析中に血圧が200mmHgを超える場合は、体液の過剰な蓄積やドライウェイトの設定が高め、ホルモンや自律神経の乱れなどが原因として考えられます。放置すると脳出血や心不全など命に関わる合併症を引き起こすおそれがあるため、注意が必要です。
激しい頭痛や胸・背中の痛み、手足のしびれなどの症状がある場合は、すぐに救急車を呼びましょう。日ごろから塩分・水分を控えた食事や運動習慣などの生活習慣を整え、家庭血圧を朝夕記録し、異常を感じたら早めに主治医に相談しましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。










