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2019年01月11日

【保存版】透析患者は便秘になりやすい!?その原因と対策まとめ

人工透析を受けている患者の中には、便秘で悩んでいる方がたくさんいます。透析患者の半数は便秘といっても過言ではありません。

では、どうしてそんなことが起こるのでしょうか?また、効果的な予防策はあるのでしょうか?今回はその原因と自宅でできる対策をご紹介します。

     

便秘の定義を知っていますか?

そもそも、どのくらい排便がなければ便秘というのでしょうか。

日本内科学会では便秘を「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義しています。

また、日本消化器病学会の定義では、「排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔が不規則で便の水分含有量が低下している状態」となっています。

便秘は個人差が大きいため、明確に定義できません。しかし、毎日排便がある人でも、お腹に便が残っていると感じる「残便感」や便が出しづらいと感じる「排便困難感」があれば、便秘と考えていいでしょう。

透析治療と便秘

機能性便秘と器質性便秘の違いを知っておこう

一口に「便秘」といっても原因や症状は様々で、原因により対処法も変わってきます。

便秘を大きく分けると、「機能性便秘」と「器質性便秘」の2種類に分類できます。機能性便秘は、食生活や普段の生活習慣が原因となって起こるもの。一方、器質性便秘は、胃・腸・肛門といった消化器官の疾患によって起こる便秘です。

さらに、機能性便秘は腸の緩みによって起こる「弛緩性便秘」と腸の過緊張で起こる「痙攣性便秘」に分けられます。

     

弛緩性便秘

日本人にもっとも多く見られるのが弛緩性便秘です。大腸の筋肉が緩んでいるため便を押し出す「ぜん動運動」が十分にできず、便が腸内に溜まってしまった状態です。

     

痙攣性便秘

弛緩性便秘とは反対に、ぜん動運動が激しくなりすぎて腸が痙攣した状態になり、便秘と下痢を繰り返します。主に、ストレスや不規則な生活によって、腸の活動を司る自律神経の働きが乱れることで起こります。

     

器質性便秘

内臓の疾患によって起こる便秘です。原因となる病気としては、腹膜炎・腸閉塞・腸捻転・潰瘍性大腸炎・大腸がん・子宮筋腫などがあります。便秘とともに、激しい腹痛や吐き気を感じる場合もあります。

     

便秘になりやすい人・なりにくい人

便秘には、毎日の食事や生活習慣が大きく関係しています。そのため、以下のような人は便秘になりやすいといえます。

     

水分が不足している

便の成分の75%は水分でできています。水分の摂取量が少ないと便が固くなり、便秘になってしまいます。

     

食物繊維が不足している

食物繊維には、腸内の環境を整えてぜん動運動を促す効果があります。また、食物繊維は便の成分でもあるので、摂取量が少ないと排便回数が減ってしまいます。

     

栄養バランスが偏っている

人の腸内には、約100種類100兆個の細菌が棲みついています。腸内細菌には消化吸収を助ける善玉菌と有害物質や発がん性物質を出す悪玉菌がいます。栄養が偏ると腸内細菌のバランスが崩れ、便秘になりやすくなります。

     

ストレスがある

腸のぜん動運動をコントロールしているのは自律神経です。ストレスがたまると自律神経が乱れ、腸の働きも鈍くなります。すると、便がうまく作れなかったり、腸内に便が溜まったりといったことが起こります。

     

運動不足

運動不足になると、次第に全身の筋肉が衰えていきます。すると腸を動かす筋肉も弱って十分なぜん動運動ができなくなり、便秘の原因となります。

     

不規則な生活をしている

生物の体には、周期的に時を刻む体内時計の機能が備わっています。不規則な生活で体内時計が乱れると、自律神経のバランスも崩れ便秘になりやすくなります。

     

高齢

年齢を重ねると、腸の働きが次第に鈍くなってきます。同時に便意を感じる神経も鈍ってくるので、排便回数が少なくなり便秘がちになります。他にも摂取カロリーが少ない、加齢による腸内細菌のバランスの変化などが便秘の原因として考えられます。

     

女性

女性ホルモンのひとつである「黄体ホルモン」には子宮の収縮を抑える作用がありますが、その影響で大腸の働きも鈍ってしまうのです。そのため、黄体ホルモンが多く分泌される月経前後や妊娠中は、便秘がちになってしまいます。

また女性が妊娠すると、胎児の成長に伴ってほかの臓器がどんどん圧迫されていきます。そのため妊娠中はさらに便秘になりやすい状態と言えます。

     

透析治療と便秘の関係

透析患者が便秘になりやすい理由

このように便秘になりやすい理由を見てみると、透析患者に当てはまる項目が多いことに気づいたのではないでしょうか。

透析患者には厳しい水分摂取制限があり、水分不足になりがちです。また、血中カリウム濃度を抑えるため、摂取できる野菜にも制限があります。そのため食物繊維も不足しがちです。

食事制限を守ろうとするあまり、栄養バランスが崩れてしまうこともあります。健康な人を比較すると、透析患者は悪玉菌の比率が高いという研究結果もあります。

糖尿病から人工透析を受けるようになった患者は、自律神経障害を併発していることも。すると腸のぜん動運動が鈍くなる、便意を感じにくくなるといったことが原因で便秘がちになります。

     

薬剤の副作用による便秘も

どんなに人工透析治療が進歩しても、天然の腎臓のように老廃物を完璧に取り去ることはできません。そのため透析患者は、リン吸着剤やカリウム抑制剤を服用することになります。その薬剤が原因で便秘になってしまうこともあるのです。

リン吸着剤のフォスブロック・レナジェル・キックリン・カルタン・ホスレノールなどには、便秘の副作用があります。カリウム抑制剤のカリメート・ケイキサレート・アーガメイトゼリーなども、便を硬くして便秘がちになる副作用があります。

糖尿病の場合、コレステロールを下げるためにコレバインなどを服用している患者もいらっしゃるでしょう。実は、この薬にも便秘の副作用があります。

     

【要注意】便秘を放っておくとどうなる?

便秘とは、老廃物がずっと体の中に溜まっている状態です。すると、体の様々な部分に不調が現れてきます。

よく見られる不調としては、「肌荒れ・食欲不振・倦怠感・疲労感・めまい・頭痛・腹痛・腰痛・肩こり・冷え性」があります。どこに不調が現れるかは個人差が大きいのですが、便秘が長く続くと症状もひどくなる傾向があります。

便秘を放っておくと、体の不調が現れるだけでは済みません。場合によっては、便秘が重大な疾患を招くこともあります。1つずつ見ていきましょう。

     
   

虫垂炎

虫垂炎は、いわゆる盲腸のことです。硬い便が盲腸をふさいでしまうことで、細菌感染が引き起こされ虫垂炎になることがあります。感染が盲腸以外にまで広がると、腹膜炎になります。

     
   

腹膜炎

腸の内側を覆っている腹膜が、細菌に感染して炎症を起こした状態です。軽症なら抗生剤による治療もできますが、ほとんどの場合は緊急手術となります。

     
   

大腸憩室炎

便秘が続くと、腸が詰まって町内の圧力が高くなります。すると、腸の一部が風船のように膨らんで外側に飛び出す「憩室」という部分ができることがあります。その憩室が細菌に感染して炎症を起こすのが大腸憩室炎です。

     
   

大腸ポリープ、大腸がん、直腸がん

腸内に長く便がとどまっていると、腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増えてしまいます。すると、悪玉菌の出すフェノール・クレゾール・アンモニアといった有害物質や、ニトロソアミンなどの発がん性物質も増加。

その結果、大腸ポリープ・大腸がん・直腸がんなど重大疾病の発生率も高くなってしまうのです。

     
   

裂肛(切れ痔)・痔核(いぼ痔)・痔瘻・脱肛

便が腸内に長くとどまっていると、水分が再吸収されて便が硬くなります。すると排出時に肛門に負担がかかり、切れたり出血したりといったことが起こります。その傷が痔の原因になります。

また、硬い便が肛門周辺を圧迫するため、血の流れが悪くなります。これも痔の原因のひとつです。痔が重症化すると肛門の粘膜が体から飛び出し、脱肛を起こすこともあります。

     
   

腸閉塞

硬くなった便が完全に腸をふさいでしまうと、腸閉塞になります。溜まった便やガスで腸が圧迫されて血液が行き渡らなくなり、激しい腹痛や吐き気といった症状が見られます。最悪の場合はショック症状で命を落とすこともあるので、すぐに治療を行わなければなりません。

     
   

腸管穿孔

便秘が悪化すると、硬くなった便が溜まりすぎて腸壁を突き破ってしまうことも。すると腸内細菌が急激に体内に広がり、ショック症状や敗血症を引き起こします。腸管穿孔は命に関わる事態なので、一刻も早く手術しなければなりません。

     

透析治療と便秘

透析患者にオススメする3つの便秘予防と対策

   

1.運動療法

運動療法の主な目的は、腸を動かす筋肉を鍛えることです。それ以外にも、運動によって自律神経を刺激して、腸の働きを整えるという効果もあります。

ただし、激しい運動をするとクレアチニンや尿素といった老廃物が体内で増加します。透析患者にとっては体調を崩す原因となるので、軽いトレーニングに留めておきましょう。

腹筋を鍛えるなら、仰向けに寝そべって両膝を立ててください。お腹に力を入れて上半身を起こし、その状態で10?20秒我慢します。この運動を1日に数回行うだけで、腹筋が鍛えられます。

腹筋運動が辛いという方は、真っ直ぐに立って足を軽く開いてみてください。正しい姿勢をとるだけでもお腹周りの筋肉を使います。この状態から腰を左右にひねってみましょう。腹筋を使うだけでなく、腸に刺激を与えられて効果もアップします。

     
   

2.マッサージ

お腹のマッサージは、外から腸に刺激を与えて排便を促す効果があります。

まず、仰向けに寝そべって両膝を立ててください。お腹に手を置いて、おへそを中心に円を描くようにゆっくり撫でます。ポイントは時計回りに撫でることと、力を入れずに優しく触れることです。

俯せに寝るだけでも、腸に刺激を与えられます。さらにその状態から、横向きにゴロゴロ転がるのもオススメです。それだけでお腹のマッサージと同じような効果があります。

マッサージや運動は、毎日こまめに行うことが大切です。週末に時間を作ってまとめて腹筋運動をしても、なかなか便秘は解消しません。少しでもいいので、気がついたときに行うよう習慣づけましょう。

     
   

3.食事療法

便秘の予防・解消には、食事内容の見直しも大切です。透析治療の食事療法との両立は面倒かもしれませんが、以下の食物を積極的に摂取して便秘を改善しましょう。

  • 水溶性食物繊維:こんにゃく・昆布・ひじき・わかめ
  • 不溶性食物繊維:根菜類・きのこ類・穀類・豆類・イモ類・緑黄色野菜
  • 乳酸菌:ヨーグルト・糠漬け・味噌
  • ビタミンB1:玄米・小麦胚芽・ごま・大豆・豚肉
  • ビタミンE:植物油・小麦胚芽・アーモンド・ピーナッツ・卵黄・たらこ

水溶性食物繊維には便を柔らかくする、不溶性食物繊維には水分を含んで膨らむという効果があります。乳酸菌には、腸内環境を整える効果が。自律神経を刺激して腸の活動を整えるビタミンB1や、腸のぜん動運動を促進するビタミンEも積極的に摂りましょう。

また、油は腸内で潤滑剤となって便を出やすくする効果があります。料理に香辛料や酸味を取り入れると、腸に刺激を与えられます。食事で摂取することが難しい場合は、サプリメントに頼ることも考えてみてください。

     

透析患者でも安心して使える便秘薬

運動療法や食事療法では便秘が改善できないときは、便秘薬を服用することになりますが、一口に便秘薬といっても、その働きかたは様々。便秘のタイプと合っていなければ、まったく効果が出ないばかりか症状を重くしてしまうことすらあります。

便秘薬には大きく分けて、便に働きかける「機械性便秘薬」と腸に働きかける「刺激性便秘薬」があります。さらに機械的便秘薬は、便を柔らかくする「浸潤性」、便の量を増やす「膨張性」などに細かく分けられます。

  • 機械的下剤:アミティーザ・ソルビトール・ラクツロースなど
  • 刺激性下剤:プルゼニド・アローゼン・ラキソベロンなど
     

透析患者は酸化マグネシウムに要注意

機械性便秘薬には、酸化マグネシウムが主成分になっているものがあります。腸への刺激が少なく腹痛や下痢などが起こりにくいため、市販の便秘薬や胃腸薬にも含まれています。

しかし透析患者にとっては、酸化マグネシウムは禁忌。酸化マグネシウムが体内に溜まると人工透析では除去しきれず、高マグネシウム血症になってしまう危険があるのです。

高マグネシウム血症になると倦怠感や吐き気を感じるようになり、最悪の場合は命にかかわることもあります。自己判断で便秘薬を使うのではなく、服用する前にかかりつけ医師に相談しましょう。

     

まとめ

長文を最後までお読みいただきありがとうございます。

透析患者の多くが悩まされている便秘の原因は様々です。改善にはまずどんなタイプの便秘かを見極めて、それに合った対策をとらなければなりません。対策が合っていなければ、便秘が重症化してしまうこともあります。

便秘がきっかけで別の病気を併発することもあります。たかが便秘とは考えず、少しでも不調を感じたらすぐ医師に相談するのがベストです。

     

※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。

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