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2021年06月11日

ビタミン摂取も大切!透析患者さんが不足しやすいビタミンとは?

ビタミンは食べたものから体や脳を動かすためのエネルギーをつくるサポートや、成長・免疫・造血などの体の働きのサポートに関わっています。ビタミンは野菜や肉、魚、卵などのたんぱく質に多く含まれており、食事制限が必要な透析患者さんでは不足しやすいビタミンの種類もあります。透析患者さんで不足しがちなビタミンと、反対に摂りすぎてしまいがちなビタミンについて、さらにはサプリメント摂取についても確認していきましょう。

 

透析患者さんはビタミンが不足しやすい

それではなぜ透析患者さんはビタミンが不⾜しやすいのでしょうか。実は透析患者さんにとって⼤切なカリウム制限に関係があるのです。腎臓の機能が低下するとカリウムが排泄されにくくなります。体の中にカリウムが溜まると、カリウム濃度が高くなって高カリウム血症を起こすため、透析患者さんはカリウム制限が必要です。

カリウムは生の野菜に多く含まれています。カリウムを減らすために野菜を「茹でこぼす」「水さらす」などの下処理をして調理すると、野菜に多く含まれる水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンC)もカリウムと一緒に失われてしまいます。
また、たんぱく質の制限が必要な透析患者さんはビタミンB群が多く含まれる肉や魚、卵の摂取も制限されます。

透析治療によっても水溶性ビタミンは除去されるため、透析患者さんはビタミンの中でも水溶性ビタミンの不足がみられます。

ホロニクスグループ 栄養管理部
古賀病院グループ 透析食のポイント
水溶性ビタミン(ビタミンB群、ビタミンC)をサプリメントで補充

 

ビタミン接種

透析患者さんが不足しやすいビタミンと主な働き

透析患者さんで不足しやすい水溶性ビタミンと主な働きについて説明します。

ビタミン 主な働き
ビタミンB1 ・糖質をエネルギーに変える。
・糖質をエネルギー源として働いている脳や神経の働きにも関与。
ビタミンB2 ・脂質、炭水化物、たんぱく質などほとんどの栄養素の代謝に関わる。
・成長促進や皮膚・粘膜の保護にも関与。
ビタミンB3 ・たんぱく質、脂質、炭水化物の代謝に関わる。
・免疫系の維持
葉酸 ・赤血球の生成、DNA・RNAの合成、アミノ酸の代謝、たんぱく質の合成に関与。
・細胞の増殖に関わる。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
厚生労働省
ホロニクスグループ 栄養管理部
古賀病院グループ 透析食のポイント

透析患者さんが過剰になりやすいビタミンの種類

水溶性ビタミンが失われやすい一方で脂溶性ビタミンのビタミンAは透析治療では除去されないため、透析患者さんでは過剰になりやすいビタミンです。ビタミンAを過剰摂取すると高カルシウム血症の原因となることもあります。

ビタミンAを過剰に摂取すると、次のような症状がみられます。

症状の現れ方 症状
急性症状 吐き気、嘔吐、頭痛、腹痛、めまいなどの症状がみられ、その後に皮膚が剥がれ落ちる
慢性症状 慢性症状 関節・骨の痛み、皮膚の乾燥、脱毛、食欲低下、体重減少、肝臓や脾臓の腫れ、脳圧亢進による頭痛や視神経乳頭のむくみや充血
その他の症状 催奇形性(妊娠中に胎児に奇形が生じる危険性がある)、骨密度の減少・骨粗鬆症

内閣府 食品安全委員会

サプリメントによるビタミン摂取について

透析患者さんは食事制限や透析による栄養素の除去によってビタミンが不足しがちですが、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンKにおいては、サプリメントで補充するとかえって過剰摂取となることもあります。

 

ビタミンC

ビタミンCを過剰摂取すると、ビタミンCが体内で代謝される際にできるシュウ酸が体にたまり、尿路結⽯の原因となります。

 

ビタミンD、ビタミンK

透析患者さんは活性型ビタミンDが不足しやすく、骨・ミネラル代謝異常が起こり心血管疾患へ悪影響を及ぼすことが言われていますが、市販の非活性型ビタミンDのサプリメントを摂取しても効果は得られないことが報告されています。最近では、活性型ビタミンDを投与しても心血管疾患へ悪影響を及ぼすリスクは減らず、むしろ高くなるという報告もあります。1)

ビタミンDおよびビタミンKは透析で出される薬の中に入っていることが多く、サプリメント摂取すると過剰摂取になる恐れがあります。

サプリメント摂取の注意点

透析患者さんはビタミンB群が不足しがちですが、複数の薬を服用している患者さんが多く、透析患者さん一人ひとりの状態は異なるため、健常者用のサプリメントがすべての透析患者さんに良い結果を与えるとは言えません。

ビタミンAやビタミンCなど、摂りすぎるとかえって体に悪影響を及ぼす場合や、ビタミンDやビタミンKなど、すでに処方されている薬で補われている場合もあるため、サプリメントの摂取は積極的に勧められるものではありません。
食事でカリウム摂取の量を抑えつつ、ビタミンを摂取していくことが大切です。サプリメント摂取については、主治医や管理栄養士に相談しましょう。

透析患者用マルチビタミンサプリメントの有用性評価
透析患者におけるシュウ酸代謝の検討
第18回三島クリニック講演会「透析患者さんが元気で長生きするために必要なこと」
1)大阪市立大学 透析患者に活性型ビタミン D を投与しても心血管リスクは低下しないことが明らかに
CKD患者診療に管理栄養士の介入は推奨されるか?

栄養士

まとめ

透析患者さんは食事制限や透析治療での栄養素の除去により、体のエネルギー源の産生や体のさまざまな働きに関わるビタミンB群が不足しがちです。

一般的には不足しがちなビタミンをサプリメントで補う方法がありますが、透析患者さんでは他にも薬をたくさん服用していて相互作用が心配される場合や、サプリメントを摂取すると過剰摂取になる場合もあり、健常者と同じようにサプリメントを摂取することはお勧めできません。基本は食事でビタミンを摂取することが大切です。

ビタミン不足について気になる場合は主治医や管理栄養士に相談しましょう。


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