透析患者にハンプが使われるのはなぜ?心不全治療との関係
透析治療を受けている方は、体液量の調整の難しさや、心臓への負担が大きくなりやすい背景から心不全を合併することも少なくありません。急性心不全や慢性心不全が急に悪化したときに使用される薬の一つがハンプ(一般名:カルペリチド、遺伝子組換え)です。名前を聞いたことがあっても、「どのような薬なのか」「なぜ透析患者に使われるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
この記事では、透析患者と心不全の関係を整理した上でハンプの特徴や注意点について解説します。
透析患者は心不全を起こしやすい?
透析患者の主な合併症の一つに心不全が挙げられます。わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)によると、慢性透析患者の死亡原因として感染症(26.8%)に次いで多いのが心不全(19.2%)です。
腎機能が低下していると余分な水分を体外へ排出しにくく、体内に水分がたまりやすくなります。この状態が続くと、心臓に大きな負担がかかり、心不全の原因となります。また、透析患者ではいくつかの要因が重なることが多く、高血圧や動脈硬化、貧血といった合併症も心不全のリスクを高める要因です。
ハンプとは?心不全治療に使われる薬
ハンプは、α型ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド製剤です。α型ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチドの受容体に結合し、血管拡張作用や利尿作用などをもたらします。
これらの作用により、心臓への負担を軽減し、全身の血流改善が期待されます。急性心不全や慢性心不全の症状悪化時に、症状の改善を目的として選択されることのある薬です。
ハンプの作用
ハンプは、細胞内の物質(cGMP)を増やすことで、体に備わっている心臓を守るための働きを助けます。おもに次の作用があります。
- 血管拡張作用:全身の血管(特に肺の血管)を広げることで、心臓が血液を送り出すときの抵抗を減らす。
- 利尿作用:腎臓の血流を良くして尿の量を増やし、体内の余分な水分を尿として出す。
- ホルモンへの作用:心不全の状態を悪化させてしまうホルモン(レニンやアルドステロン)の分泌を抑える。
ハンプの使用方法
ハンプは点滴として使用される薬です。医療機関で個人の状態に合わせて調整され、投与されます。
・独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 ハンプ注射用1000 添付文書 2022年3月改訂(第1版)(2026.3.21閲覧)
透析患者にハンプが使われる理由と注意点
透析患者にハンプが使用されるおもな理由と注意点をお伝えします。
透析患者にハンプが使用される理由
透析患者にハンプが使用されるのは、体にたまった余分な水分(体液過剰)によって起こる心不全を改善するためです。
透析患者では水分やナトリウムが体内にたまりやすく、血液量が増えることで心臓に大きな負担がかかります。その結果、心臓の働きが低下し、心不全の症状があらわれます。透析患者では透析による除水が体液管理の基本となりますが、急性心不全の悪化時には薬物療法としてハンプが併用されることがあります。
ハンプは、血管を広げて心臓が血液を送り出しやすくするとともに、ナトリウム排泄促進作用により、心臓にかかる負担の軽減を目指す薬です。
ハンプを使用する際の注意点
ハンプは血圧を下げる作用があるため、過度の血圧低下や徐脈が見られることがあり、投与中は血圧や心拍数、尿量、電解質などを十分に観察しながら使用することが大切です。
また、利尿作用により過剰な体液減少(脱水)や電解質異常が生じる可能性もあります。特に透析患者では体液管理が重要となるため、除水量や全身状態を踏まえた慎重な調整が必要です。利尿剤やシルデナフィル(バイアグラ等)などのPDE5阻害薬を服用していると、血圧が下がりすぎてしまう危険性があるため、服用している薬は事前に必ず医師に伝えましょう。
重度の低血圧や脱水状態の場合には、投与が適応とならない場合もあります。
・独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 ハンプ注射用1000 添付文書 2022年3月改訂(第1版)(2026.3.21閲覧)
まとめ
透析患者は体液管理の難しさや合併症の影響により、心不全を起こしやすい状態にあります。とくに体に水分がたまりすぎることで心臓に負担がかかり、心不全の悪化につながることがあります。
ハンプは血管を広げて血流を改善し、水分やナトリウムの排泄を促すことで、こうした体液過剰による心不全の状態を改善する目的で用いられる薬です。
一方で、血圧低下や脱水、電解質異常などに注意が必要であり、透析治療とのバランスをみながら慎重に使用されます。投与は患者さん一人ひとりの状態に合わせて判断されるため、使用している薬や気になる症状がある場合は医師に相談することが大切です。
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