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2021年07月01日

透析液の種類と成分について知ろう

透析液は複数のメーカーから成分の異なる製品が作られています。点滴のように製品をそのまま使用するのではなく、施設の透析供給装置にて透析液原液を透析用水で希釈した透析液が用いられているので、透析患者さんが透析液製品自体を目にする機会はなかなかないと思います。

今回は透析治療に欠かせない透析液について、含まれる成分や成分濃度、透析液の種類による違いなどについて理解を深めていきましょう。

 

点滴

透析液に含まれる成分の種類

血液透析では血液と透析液の濃度や成分の大きさの違いを利用して、透析膜に開いている小さな穴を介し、血液側の成分と透析液側の成分の一部が移動できるようになっています。 透析液は血液中の足りない成分を透析液から血液側へ補うほか、電解質濃度の調整や酸性・アルカリ性のバランスを調整しています。

透析液には電解質、ブドウ糖、アルカリ化剤の重炭酸や酢酸が含まれています。透析液に含まれる成分とそれぞれの成分の役割をみていきましょう。

透析液に含まれる成分 役割
電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム) 電解質濃度の調整
ブドウ糖 血糖値の調整
重炭酸 身体が酸性に傾く酸性アシドーシスを抑え、体本来の弱アルカリ性にする
酢酸 カルシウムやマグネシウムの結晶化を防ぐ

・MediPress透析 Q.透析液には何が入っているのですか?
・MediPress透析 透析液の役割と特徴
・小山すぎの木クリニック 透析液についての勉強会

 

透析液中の各成分濃度と成分の移動

メーカーや製品により、透析液に含まれる各成分の濃度には若干の違いがあります。透析液の種類は透析施設の治療方針や透析患者さんの体の状態によって選択されます。

透析液の各成分における濃度と特徴を次の表にまとめています。

透析液に含まれる成分 各成分の濃度と特徴
Na(ナトリウム) 細胞外液に準じた140 mEq/L前後に設定されている。
K(カリウム) 高カリウム血症を補正できるように細胞外液のK濃度(4 mEq/L)よりも少ない2.5mEq/L以下に設定されている。
Ca(カルシウム) 2.5mEq/L、2.75mEq/L、3.0mEq/L 、3.5mEq/Lの製品がある。
透析患者さんのCa濃度によって、Ca濃度の低い場合は濃度が高めの製品で補給を行い、Ca濃度の高い場合は濃度が低めの製品で調整を行う。
Mg(マグネシウム) 細胞外液のMg濃度(3 mEq/L )よりも低い1.0 mEq/L もしくは1.5 mEq/Lに設定されており、体内に溜まっているMgの除去を行う。
ブドウ糖 空腹時血糖値と同様の100mg/dLになるように設定されている。125mg/dL、150mg/dL含まれている製品やブドウ糖が含まれていない製品もある。
HCO3(重炭酸) 全米腎臓財団のガイドラインにて透析治療前の重炭酸は22 mEq/L 以上に維持すべきとされている。 25mEq/L、27.5mEq/L、28 mEq/L 、30mEq/L、35mEq/L などの製品がある。

点滴

実際の透析液製品の中からピックアップした各成分の濃度の例を挙げています。
※透析液製品ごとの各成分濃度の例(2013年時点)

(mEq/L) (mg/dL)
Na K Ca Mg Cl HCO3 Acet Glu
A 140 2 3 1 111 30 - 150
B 140 2 3 1 111 25 10 100
C 135 2.5 3.5 1.5 106.5 30 6(+2) -
D 140 2 2.75 1 112.25 27.5 6(+2) 125

(Na:ナトリウム、K:カリウム、Ca:カルシウム、Mg:マグネシウム、Cl:塩素、HCO3:重炭酸、Acet:酢酸()内はPH調整用の氷酢酸、Glu:ブドウ糖)

・友雅司 透析液の清浄化と透析液組成の最新情報 日腎会誌 2013;55(4):498-501.
・一般社団法人 日本透析医学会 血液透析患者の糖尿病治療ガイド 2012  (3) 透析液ブドウ糖濃度 日本透析医学会雑誌 46巻3号 2013

透析液の成分の移動

透析液に含まれる各成分は血液と透析液の濃度の違いから透析液から血液へ移動するものと血液から透析液へと移動するものがあります。

透析液の成分 移動の内容
K(カリウム)、
Mg(マグネシウム)
血液→透析液
血液中の余分なK、Mgが透析液へと移動し除去される。
HCO3(重炭酸) 透析液→血液
身体が酸性に傾くことを抑えるために透析液のHCO3が血液へ移動し補給される。
Ca(カルシウム) 血液→透析、または透析液→血液
血液中のCa濃度が高い場合は血液から透析液へ移動し除去される。
血液中のCa濃度が低い場合は透析液から血液へ移動し補給される。

・MediPress透析 Q.透析液には何が入っているのですか?

一回の透析で使用される透析液量と透析液の希釈倍率

1回の透析では1人につき透析液を120~150L使います。
透析液は透析原液を透析液供給装置にて透析用水で薄めて使用しています。水道水には水以外の物質も含まれているため、水処理装置で不要なものを取り除き、透析用水が作られています。

透析製品の種類により、透析用水で薄める(希釈)倍率は異なります。どのように透析液が作られているのか、透析液製品ごとの希釈倍率例をみていきましょう。

希釈倍率
α社の透析液 A液とB液と希釈用の水を混ぜ、希釈する。
A液:B液:希釈水=1:1.26:32.74
β社の透析液 B剤を希釈用の水に溶かして11.5LのB液をつくる。
B液:希釈水=1:26 でB希釈液をつくる。
B希釈液:A液=34:1 で混ぜて用いる。
γ社の透析液 A剤を希釈用の水に溶かして9LのA液をつくる。
B剤を希釈用の水に溶かして11.34LのB液をつくる。
A液:B液:希釈水=1:1.26:32.74 の倍率で希釈、調整を行う。

・扶桑薬品工業株式会社 8.透析液について
・扶桑薬品工業株式会社 10. 透析装置について
・広報さわだ 透析液って何??
・キンダリー透析剤AF2号
・AK-ソリタ透析剤・FP
・リンパック透析剤TA3

まとめ

普段透析時に使用されている透析液の中には血液中の余分な水分や成分を効率よく除去・補給し、電解質濃度や酸性・アルカリ性のバランスを調整するための成分が含まれています。メーカーや製品の種類によって含まれる成分濃度は若干異なり、施設や患者さんの状態によって選択されています。

普段使用している透析液は施設の透析供給装置にて、透析原液と透析用水を混ぜて作られており、透析液にはいろいろな種類があることを知っておきましょう。


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